高松塚・キトラ壁画にシミ・穴

   「高松塚・キトラ壁画にしみ・穴」

   美肌を覆う敵「早く外へ」 もろく、殺菌がやっと!

  粘ついたしみに無数の穴。奈良県明日香村の高松塚古墳とキトラ古墳の石室に描かれた極彩色壁画は、次々に現れる難敵に苦しめられている。文化庁はその退治に追われるが、発生原因がはっきりしないうえ、もろい壁画に使える手立てには限界がある。「とにかく、早く外に出して処置しないと」。 時間との勝負とも言え、同庁は高松塚の石室解体準備とキトラの壁画はぎ取りを加速させる方針である。

 茶色いゲル状のしみは9月、キトラ壁画の獣頭人身十二支像の寅の周囲などで見つかった。同庁はアルコールをつかって拭取ったが、今月点検したところ、再び寅の周りが茶色く覆われ始めた。このため、より殺菌力の強いアルコールや過酸化水素水などで除去や再発防止にあたっている。

 しかし、「何時どうなるか予測がつかない」と田中康成・同庁記念物課員。白虎(西壁)や青竜(東壁)などを順に剥ぎ取り、しっくいから泥に転写された形で6月に見つかった十二支像の午の処理などで作業は中断しているが、予定を早めて25日から再開させることにした。 対象は北壁の玄武、亥、子、丑、東壁の寅で、1点あたり約2週間かけて取り外す。壁画の状態によっては時間が掛かることも予想される。南壁の朱雀はしっくいが薄くて危険なため後回しとなり、多数の穴が見つかった天井の天文図もはぎとりのめどは立っていない。

 高松塚壁画はゲル状のしみを除去しようにも、しっくいがもろくて壊してしまう恐れがある。 アルコールを塗って殺菌するのがやっとだ。同庁美術学芸課の小林達郎・文化財調査官は「放っておくと、しみによる変色の可能性もあるが、石室解体までは墳丘に備えた冷却装置の効果に期待するしかない。壁画を外に出せば処置のしようもあるのだが」と話した。

 キトラの南壁解体も検討を 河上 邦彦(神戸山手大学教授)の話。

 高松塚、キトラとも同じ現象が見られるのは、地球温暖化の影響もあるのではないか。高松塚は07年予定の石室解体を早める必要があるだろうし、キトラは剥ぎ取りが難しい朱雀が描かれた南壁を解体し、取り外すことも検討すべきだ。

  (2005年・平成171019日 朝日新聞)

   キトラ、天文図で剥落

   壁画劣化止まらず 文化庁発表

 

文化庁が画像処理をしたキトラ古墳の天井の写真。赤い点がしっくいの剥落部分、黄色は黒っぽいしみ、緑色はゲル状のシミを表している。

 奈良県明日香村のキトラ古墳で、壁画が描かれた石室天井などのいっくいに200ヶ所以上の小さな剥落があることがわかった。文化庁が18日、発表した。

 石室内に入り込む水やカビが原因と見られる。壁画の劣化がくい止められないことから、同庁は中断していた壁画の剥ぎ取り作業を25日に再開する。又、同村の高松塚古墳の壁画に、バクテリア(細菌)やカビによる粘りついたゲル状のしみが発生していることも新たに判明した。

 キトラ古墳のしっくいの剥落は9月下旬に確認された。天井を中心に東壁、西壁、南壁に点在すし、多くは直径数ミリ程度、最大のものは直径1.5pあった。殆どは絵の無い部分だが、南壁に描かれた朱雀の尾羽と天井の天文図では描線が一部落ちていた。

 同庁は石室の石壁としっくいの間に溜まった水や、それによって発生したカビがしっくいを劣化させたとみている。

 高松塚の古墳のしみは912日の点検で判明。茶色の粘りけのある物質で、一部で粒状になっていた。西壁に描かれていた女子群像をはじめ、南壁以外の全ての壁に点在し、中にバクテリアやカビなどが確認された。

 壁画がもろいため、シミの除去は難しいと同庁は判断。アルコールを塗って殺菌し、壁面修復のため071月にも着手する予定の石室解体まで現状を維持したい考えだ。

 キトラ古墳でも9月、同じようなシミが獣頭人身十二支像の寅(東壁)などで見つかった。一旦除去したが、再び発生しているといい、殺菌剤を強力なものに変えて拡大を防いでいる。

2005年・平成171019日 朝日新聞)

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(朝日新聞、2006年5月11日)

 


(2006年5月13日)

壁画古墳・何故カビが?

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