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知床半島

   知床半島

 知床半島 しれとこはんとう 北海道東部、オホーツク海につきでた半島。オホーツク海と根室海峡をわける。オホーツク海沿岸の斜里町峰浜と根室海峡側の標津町薫別(くんべつ)をむすぶ基線から、先端の知床岬まで約65kmのびる。古くは目梨半島(めなしはんとう)ともよばれた。

半島主要部をなす山地は、新第三紀層( 第三紀)の基盤の上に噴出した知床火山群からなり、北から知床岳(1254m)、硫黄山(いおうざん。1563m)、羅臼岳(1661m)、遠音別岳(おんねべつだけ。1331m)、海別岳(うなべつだけ。1419m)とつらなる。山地は全体に急峻(きゅうしゅん)で、海岸には海食崖が発達する。

山腹には針葉樹のエゾマツ、トドマツや広葉樹のダケカンバ、ミズナラ( ナラ)の原生林がしげり、山頂部や稜線には高山植物群落がみられる。キタキツネ( アカギツネ)、エゾシカ( ニホンジカ)が生息し、シマフクロウ、オジロワシ(ともに国の天然記念物)などの野鳥類も豊富。先端の知床岬付近にはアザラシ、トドなどの海獣が生息する。斜里町岩尾別では1977(昭和52)から、業者による乱開発防止のため、全国の有志の募金によって離農開拓者の跡地を買いあげる「知床100m2運動」がはじまり、ナショナル・トラスト運動として大きな反響をよんだ。

オホーツク海側の西海岸では宇登呂港(うとろこう)を基地にサケ、マス漁がおこなわれ、小平地に番屋が点在する。根室海峡側では羅臼港を基地にスケトウダラ漁、イカ釣り漁が盛んで、コンブ漁やサケ漁もおこなわれる。海別岳山麓(さんろく)はパイロットファーム事業による大規模酪農地帯で、斜里町側ではジャガイモ、テンサイなどの畑作農業も盛んである。

1980年、知床峠をこえて半島の両側をむすぶ知床横断道路が完成し、陸上交通が改善されたが、冬季には積雪のため閉鎖する。観光の季節には宇登呂から知床岬などへ定期観光船が運航、崖(がけ)から無数にながれおちる滝の景観が人気をよぶ。 

北海道でも数少なくなった野生動物や原始的な自然景観がのこる秘境として、半島中部から先の山岳部と海岸部が1964年知床国立公園に指定された。火山の山岳景観にくわえ、知床五湖と羅臼湖の湖沼群や、大自然の中にわく羅臼、セセキ、岩尾別などの温泉が知床ならではの魅力をつくっている。

2005(平成17)7月に知床国立公園指定地域や遠音別岳原生自然環境保全地域などの陸域と、沖合3kmまでの海域あわせて約71000haが日本で3番目の世界自然遺産( 世界遺産)に登録された。半島の豊かな自然と海がおりなす生態系が世界的にも貴重なものとみとめられたのである。

知床岬 しれとこみさき 北海道東部、オホーツク海につきでた知床半島の最先端にある岬。東経14521分、北緯4420分に位置する。国後島のルルイ岬と相対し、根室海峡の北口にあたる( 北方領土問題)。岬端には円形で黒と白の横線がえがかれた知床岬灯台(高さ102m、光達距離約46km)がある。

知床岬

オホーツク海に突出する知床岬。写真では高低2段の海岸段丘からなるようすがはっきりわかる。複雑にいりくんだ海岸線には多くの岩礁がつらなり、殺伐とした北方独特の景観をみせる。「最後の秘境」と称されるこの原生的な環境や景観をまもるため、人の立ち入りを規制するなど、各種行政機関の監視のもとで保全活動が展開される。海上はるかにうかぶ島影が国後島である。Encarta Encyclopedia世界文化フォト/()ジオグラフィックフォト 渡部

標高が2040m75100m2段の海岸段丘が発達し、火山性の角礫岩(かくれきがん)からなる海岸線は風や潮が浸食して形成した断崖(だんがい)や絶壁がつらなっている。周辺海域は浅く、風船岩や夫婦岩(めおといわ)などの奇岩、暗礁が散在する。冬季は流氷がながれついて凍結するが、夏季には台上が草原となりハマナス、エゾイラクサなどの植物が繁茂する。ウミウ( )、オジロワシ、オオワシなどが海食崖でみられるほか、ヒグマやエゾシカ( ニホンジカ)、アザラシの生息も確認されている。南西約1kmの段丘には穴住居跡や土器、石器などが発見された、続縄文文化期〜オホーツク文化期の知床岬遺跡がある。

岬の近くには夏から秋にかけて漁師などが利用する漁港があり、ウニと秋ザケ漁の番屋がたっている。岬端まで通じる道路がないため陸路によるアクセスはむずかしいが、610月には知床半島南部のオホーツク海側にある宇登呂港(うとろこう)から海上遊覧船が運航している。知床半島中央部から北部は人跡の少ない原生的な自然環境をのこす地域として知床国立公園に指定され、沖合3kmまでの海域もふくめて世界自然遺産( 世界遺産)に登録されている。

  知床国立公園 しれとここくりつこうえん 北海道東部、知床半島の大部分を占める国立公園。火山地形と海食崖の原始的な自然景観と、北方の半島特有の動植物相を特色とする。1964(昭和39)に国立公園に指定された。面積は386.33km2。2005(平成17)7月に知床国立公園指定域に遠音別岳原生自然環境保全地域(おんねべつだけげんせいしぜんかんきょうほぜんちいき)などをくわえた陸域と、沖合3kmまでの海域が世界自然遺産( 世界遺産)に登録された。    けわしく複雑な地形がさいわいし、人間による入植や開発がさまたげられ、現在も原始性の高い自然をのこしている。
   半島の中央部をはしる知床連山には、火山性の知床岳(1254m)、硫黄山(いおうざん。1563m)、羅臼岳などがそびえる。宇登呂港(うとろこう)から知床岬までの海岸はオホーツク海の荒波にけずられて、高さ100200mの断崖をつくり、冬には沿岸に流氷が到着し、壮大な景観をみることができる。火山性堰止湖(せきとめこ)の知床五湖や羅臼湖、オシンコシンの滝、カムイワッカの滝などの景勝地も多い。

羅臼岳

斜里町と羅臼町の境にある標高1661mの火山。知床富士ともよばれる。岩尾別川(いわおべつがわ)、幌別川(ほろべつがわ)、羅臼川、知床五湖、羅臼湖などの水源や、山頂近くの羅臼平には高山植物群がある。写真は、斜里町側からのぞむ羅臼岳。下方の林にエゾジカの姿がみえる。Encarta Encyclopedia世界文化フォト/市川傳

原生林はヒグマ、エゾシカ( ニホンジカ)などが生息し、シマフクロウの貴重な営巣地にもなっている。海岸にはトド、アザラシやウミネコ、ウミウ( )がみられ、流氷とともにオジロワシ、オオワシも渡来する。

シマフクロウ

全長71cmと、日本ではもっとも大きなフクロウ。北海道東部の原生林にわずかな個体が生息している。アイヌはコタンコルカムイ(里をまもる神)とよんであがめている。開発により生息環境がうばわれたこともあり、絶滅が心配されている。Encarta Encyclopedia叶内拓哉/資料提供:NHK

山麓(さんろく)はエゾマツ、トドマツ、イチイなどの針葉樹と、ミズナラ( ナラ)、イタヤカエデなどの広葉樹が混交林をなし、標高が高くなるにつれてダケカンバ帯、ハイマツ帯と植生をかえる。シレトコスミレなど固有種の高山植物も多い。

オオワシ

翼を広げた大きさが2mをこえる大型のワシ。カムチャツカ半島などで繁殖し、冬になるとトド、オジロワシとともに越冬のため流氷にのって知床半島にやってくる。2月ごろ、オホーツク海でスケトウダラ漁が盛んになると、おちこぼれた魚を捕食する姿がよくみられる。Encarta Encyclopedia叶内拓哉

岩尾別温泉、羅臼温泉、相泊温泉(あいどまりおんせん)、セセキ温泉などがわき、観光の拠点になっている。羅臼とウトロの間には知床横断道路が通じ、宇登呂港より運航している観光船からは知床岬までの海食崖を間近に観察できる。

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