輝石安山岩

  輝石安山岩(きせきあんざんがん)

   サヌカイト マグネシウムの対鉄比率が異常に高い黒色の輝石安山岩で、ガラス質で緻密、かたい特性をもつ。打製石器(→ 石器)の主原材のひとつ。讃岐石(さぬきいし)、讃岐岩、カンカン石などともいう。

  1916年(大正5)地質学者の小藤文次郎が瀬戸内海周辺の玄武岩、安山岩をサヌキトイドとよんだが、日本ではサヌキトイドをふくめたサヌカイトは、黒曜石、頁岩、珪岩(けいがん)などとともに石器時代の石材としてしばしばもちいられている。

  原石産地は西日本が中心で、奈良県と大阪府境の二上山(にじょうさん)、岐阜県下呂、香川県金山(かなやま)や五色台付近などが知られる。大正期に、浜田耕作が大阪府国府遺跡(こういせき)の調査で出土した石核を二上山産と指摘した例もあった。

  旧石器時代の瀬戸内海地方で独自にみられる横剥ぎ技法(よこはぎぎほう:瀬戸内技法)は、サヌカイトの剥離(はくり)しやすい特徴と強くかかわっている。また、長崎県の福井洞窟出土の古い段階の石器もすべてこの石材をもちいていた。弥生時代になってからも、石槍や石剣の石材としてつかわれた。

   東尋坊 とうじんぼう 福井県北部の三国町北西端、九頭竜川河口北側にある景勝海岸。日本海の荒波にあらわれた高さ約25mの五角形、六角形の輝石安山岩の柱状節理(→ 節理)の断崖(だんがい)が約1kmにわたってつづく。1935年(昭和10)に国の名勝、天然記念物に指定されている。

  地名の由来は、勝山の平泉寺にいた横着な僧、東尋坊がこの断崖から墜死したことによるという。北の沖合には地元で「神の島」とよばれる輝石安山岩の雄島(おしま)がうかび、暖帯性樹林のヤブニッケイやタブの大木が繁茂する。

  越前加賀海岸国定公園の中心地で、近くの芦原温泉とともに多くの観光客でにぎわう。東尋坊から雄島までマツ林をぬってつづく荒磯遊歩道には三国町ゆかりの高見順、三好達治、高浜虚子、森田愛子などの文学碑がならぶ。遊覧船からは夫婦(めおと)岩、ろうそく岩、屏風(びょうぶ)岩、軍艦岩、千畳敷などの奇勝怪石をみることができる。