翡翠

ヒスイ(翡翠)

 ヒスイ(翡翠) Jade エメラルドとともに5月の誕生石。一般に緑色系統の宝石で、古くから東洋で珍重されてきた。翡翠という漢字は、鳥のカワセミを意味する。翡はカワセミのオス、翠はカワセミのメス、また緑色の意で、ヒスイの色合いがカワセミの羽に似ていることからもちいられた。はやくから、とくに中国を中心に愛用されたが、日本でも新潟県糸魚川(いといがわ)市にヒスイの加工遺跡が存在し、勾玉(まがたま)などを制作していたことがわかっている。

 ひろい意味では、ヒスイには硬玉と軟玉があるが、宝石でふつうヒスイという場合は硬玉をさす。硬玉はヒスイ輝石、軟玉は角閃石の一種を主体とする。軟玉はネフライトの名前でよばれることが多い。

 世界的に有名な産地は、ミャンマーである。「中国のヒスイ」といわれるものがあるが、中国にヒスイは産出せず、すべてここから採掘されたものである。日本では、新潟県、兵庫県、鳥取県、長崎県、高知県などに産出する。カボション・カット(→ 宝石)にして加工されることが多い。エメラルドのような色で半透明の最上のヒスイは、「琅?(ろうかん)」とよばれる。安価な白色ヒスイを染色したものも、市場に多くでまわっている。

 ヒスイ輝石の純粋なものは化学組成NaAlSi2O6。硬度6.5〜7。比重3.3〜3.5。無色だが、アルミニウムの位置にクロムがはいると緑色になる。微量の鉄やチタンなどがまじると、あわい青色や紫色をしめす。繊維状の結晶が密にからみあって塊状になり、そのためきわめて強靭(きょうじん)でこわれにくく、硬度の数字以上にかたく感じられる。高い圧力をうけてできた変成岩中にのみ産する。

 ネフライトは、緑閃石という鉱物の繊維状結晶が密にあつまってできている。硬玉にくらべてやわらかく、加工しやすい。産出量も多く安価なので、大小さまざまな彫刻工芸品として利用される。色はやや暗いくすんだ緑色で、硬玉より脂ぎった感じがする。化学組成Ca2(Mg,Fe)5Si8O22(OH)2、少量のナトリウムなどをふくむ。硬度5〜6。比重3.0。ヒスイ輝石と同じように変成岩中に産する。アラスカ、メキシコ、ニュージーランド、トゥルケスタン、日本など、造山帯地域が産地である。


翡翠(ヒスイ)の香炉

中国の清時代につくられた香炉。蓋(ふた)のつまみの2頭の獅子(しし)と、左右についている獣環を高度な技術でほりぬいている。18.2cm1819世紀。Encarta Encyclopedia東京国立博物館所蔵

 糸魚川市 いといがわし 新潟県南西部、姫川下流域に広がり日本海にのぞむ都市。ヒスイの産地として知られる。JR北陸本線や大糸線、国道8号と148号が通じるほか、北陸自動車道の糸魚川インターチェンジがある。1954年(昭和29)糸魚川町が浦本村、下早川村、上早川村、大和川村、西海村(にしうみむら)、大野村、根知村(ねちむら)、小滝村の8村と合併して市制施行。同年に今井村の一部を編入した。面積は466.62km2(一部境界未定)。人口は3万1538人(2003年)。