古代土偶

   土偶

  土偶 どぐう 

  人間をかたどった先史時代の土製品の総称。世界各地で出土しているが、日本ではおもに縄文時代のものをいう
( 縄文文化)。早期後半に関東地方にあらわれ、前期には東日本から中部地方にもひろがり、中期になると胸に手をあてたもの、子供をだくものや背負うものなど、表現も多様化する。山梨県の釈迦堂遺跡では、1100点以上の中期の土偶が出土した。後期には九州をふくむほぼ全国でつくられ、関東ではハート形の顔をもつハート形土偶や手足のない円筒土偶などがあらわれた。晩期は東日本で盛んに製作がつづき、東北地方で遮光器土偶がつくられる。これは頭部に冠状のものをつけ、エスキモーの遮光器(雪眼鏡)のようなものをかけている。一部の土偶は弥生時代にもつづいた。

  出土したほとんどは女性像で、特定の遺構にともなうことがあまりないため、用途については諸説がある。(1)生殖・豊穣・子孫繁栄を祈願したお守り、(2)病気・災害から身をまもる形代(かたしろ:身代わり)(3)子供のおもちゃ、(4)装飾・装身具、(5)埋葬用儀礼具、(6)宗教上の祭祀(さいし)具、などの説があるが定説はない。発見された土偶は破壊されていることが多く、完全な形でのこっていることがないこと、また妊娠または出産間際の状態を写実的にしめすものがあることから、お守り説や形代説あたりが妥当だろう。台石や土壇上にあったもの、石や土器片の囲いの中におかれたもの、石囲いの中で石の蓋(ふた)をされたものなど、発見例は少ないが特殊遺構にともなって出土した土偶からもこれらの説が推測される。

  イノシシ・犬・カメ・クマなどをかたどった動物土偶も後・晩期の遺跡から出土するが、これらは食料資源として呪術の対象となった動物類と考えられている。現在まで土偶の出土例は、全国で約2万点弱といわれる。

棚畑遺跡出土の「縄文のビーナス」

  長野県八ヶ岳山麓(さんろく)は、尖石遺跡(とがりいしいせき)など、縄文中期の集落遺跡が多い。茅野市米沢の棚畑遺跡(たなばたけいせき)もそうした中期の遺跡で、この土偶は集落中央の小さな穴に完全な形でうめられていた。妊娠しているようなおなかをした豊満な下半身には、縄文人の豊穣をねがう気持ちが表現されているといわれ、世界各地の古代遺跡からみつかる地母神「ビーナス」の一種と考えられる。高さ27cm。国宝。Encarta Encyclopedia茅野市尖石縄文考古館所蔵

亀ヶ岡遺跡出土の遮光器土偶

  縄文晩期の亀ヶ岡遺跡からはたくさんの洗練された土器や石製品、漆器などが発見された。この特異な形をした土偶をはじめ、信仰に関係すると思われる道具も多く、縄文人の豊かな精神世界がうかがえる。青森県西津軽郡木造町。Encarta Encyclopedia東京国立博物館所蔵

美々4遺跡出土の海獣形土製品

  1976(昭和51)に北海道千歳市の美々4遺跡(びびよんいせき)で発掘された。縄文晩期初頭のもので文様の特徴などから東北地方でつくられたものと考えられている。ところどころに赤色顔料がのこり、墓地内の祭祀(さいし)をおこなう場所から出土しているため、死者の葬送儀礼につかわれた可能性が高い。高さは31.7cmEncarta Encyclopedia千歳市教育委員会所

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