北信越地方

上信越高原国立公園 じょうしんえつこうげんこくりつこうえん 群馬、長野、新潟の3県にまたがる国立公園。おもに山岳と高原地帯から構成され、谷川岳、志賀高原、浅間山などからなる東部地域と、野尻湖、妙高高原(みょうこうこうげん)、戸隠山からなる西部地域に二分される。1949年(昭和24)に国立公園に指定され、56年に妙高と戸隠両地域を追加した。面積は1890.62km2。

2000m級の山々がつらなり、標高1000m付近の山腹には高原地帯が広がる。構造山地の谷川岳は広大な山岳景観と登山の名所として名高い。浅間山や白根山は日本有数の活火山である。

谷川岳の一ノ倉沢

谷川岳東斜面の一ノ倉沢は深いV字形の沢で、その岩壁は絶好のロッククライミングの場となっており、北アルプスの剣岳、穂高岳の岩場とともに、日本三大岩場のひとつとして知られている。谷川岳は、天候がかわりやすく地形もけわしいため、遭難者も多く、「魔の山」とよばれている。Encarta Encyclopedia世界文化フォト/前川建二

志賀、飯綱、妙高、戸隠などに代表される高原地帯は数々の火山活動の影響で変化にとんだ地形をつくり、湖沼、湿地、滝、溶岩流がみられる。斑尾火山(まだらおかざん)の堰止湖(せきとめこ)である野尻湖、苗場山の高層湿原、浅間山北麓(ほくろく)の溶岩流「鬼押出」などが有名である。

浅間山

公園の中心部、長野・群馬両県の県境にそびえる日本の代表的な活火山(標高2568m)。麓(ふもと)の中軽井沢、信濃追分、小諸、長野原から登山ルートが通じているが、頂上の火口付近は立ち入りが禁止されている。山麓(さんろく)一帯にはカラマツ林がみられ、軽井沢、北軽井沢は避暑地としても有名である。Encarta Encyclopedia世界文化フォト/辻友成

山の斜面の森林は、ブナ、シラビソ、シラカバなど標高によってことなる植生をみせ、コマクサ、シャクナゲ、アツモリソウなどの高山植物も分布する。

動物では国の特別天然記念物であるカモシカ、サル、ツキノワグマ、ホンドオコジョ(→ オコジョ)をはじめ、ベニヒカゲなどの高山蝶や、ルリイトトンボ、オオルリボシヤンマほか昆虫類も数多くみられる。

コマクサ

高山植物の女王とよばれ、本州中部地方以北の高山帯の砂礫地(されき)に生える。公園では、草津白根山(本白根山)でみられる。ケシ科コマクサ属の多年草で、高さは5〜15cm。7〜8月に先がたれた花茎にピンク色または紅紫色の花を下向きに開く。コマクサ(駒草)の名は、花の形がウマ(駒)の顔に似ているところからつけられた。Encarta Encyclopediaオアシス/木原浩

信濃町 しなのまち 長野県北部、上水内郡(かみみのちぐん)北端の町。西で長野市、東でわずかに飯山市と接するほか、北は新潟県と境をなす。東には斑尾山(まだらおやま)、西には黒姫山がそびえ、これらの山々から中央にむかって緩やかな傾斜がつづく。東部に野尻湖がある。県内屈指の豪雪地帯でもある。1956年(昭和31)、信濃村、古間村(ふるまむら)、信濃尻村が合併して町制施行。面積は149.27km2。人口は1万601人(2003年)。

一部町域が上信越高原国立公園に属するめぐまれた自然にくわえて多数の文化財があり、それらを生かした観光事業が盛んである。中心地の柏原(かしわばら)地区は江戸時代、南の古間、野尻(のじり)とともに北国街道の宿場町がおかれにぎわいをみせた。また、俳人一茶の出身地でもあり、国史跡に指定されている旧宅、資料を展示する一茶記念館のほか句碑が点在する。ドイツの児童文学者エンデに関する資料の収集などで知られる黒姫童話館がある黒姫山東麓(とうろく)の黒姫高原や、斑尾高原は冬にはスキー客がおとずれる。野尻湖の湖畔には野尻湖ナウマンゾウ博物館がある。

戦国期、野尻湖畔にあった野尻城は上杉謙信の属城で、整備拡張された。当時、刀匠がいたことから里人は鍛冶を習得し、明治後期になると鎌(かま)の製作が盛んになった。現在まで古間地区などを中心にその技術はうけつがれ、信州打刃物(しんしゅううちはもの)として伝統的工芸品に選定されている。

秋山郷 あきやまごう 新潟県中魚沼(なかうおぬま)郡津南町の中津川上流の集落に、長野県下水内(しもみのち)郡栄村の一部をくわえた地域の名称。苗場山と鳥甲(とりかぶと)山にはさまれた峡谷で、冬季には積雪が4mにもなり、根雪は11月下旬から5月上旬にまでわたることもある。交通の不便さと豪雪のため、「陸の孤島」「秘境」とよばれた。それだけに、豊かな自然と古い民俗や民具がのこり、「民俗学の宝庫」といわれた。

「北越雪譜(せっぷ)」の著者鈴木牧之は19世紀初めに秋山郷を旅行し、「秋山記行」にこの地の風俗を記録している。第2次世界大戦の後まで、農業の大部分は焼畑耕作だった。木綿普及以前には衣類として、山野に自生するオロ(赤苧:あかそ)を縦糸に、青苧を横糸とするアンギンという布を織った。現在かろうじてのこったアンギン工具一式が、秋山郷の山村生産用具(国の有形民俗文化財)とともに津南町歴史民俗資料館に保存されている。地域全体が上信越高原国立公園にふくまれている。

鬼無里村 きなさむら 長野県北部、上水内郡(かみみのちぐん)にあった村。1889年(明治22)村制施行し、1955年(昭和30)日里村の一部を編入。2005年(平成17)1月1日、上水内郡豊野町、戸隠村(とがくしむら)、更級郡(さらしなぐん)大岡村の1町2村とともに長野市へ編入された。

栄村 さかえむら 長野県北東部、下水内郡(しもみのちぐん)の村。北西の一部で飯山市に接するほか、北と東は新潟県、南は群馬県との境となる。南部および西部は鳥甲山(とりかぶとやま)や苗場山などの山々がつらなる山地で、村域のおよそ9割を山林原野が占める。志久見川(しくみがわ)、中津川をあわせて千曲川が北部を東流する。1956年(昭和31)、水内村、堺村の2村が合併して成立。面積は271.51km2(一部境界未定)。人口は2655人(2003年)。

基幹産業は農業で、キノコや山菜を収穫する。豪雪地帯にあって、冬季の農家の副業として生産されてきた桐下駄や鉢などの木工品、和紙、藁細工(わらざいく)がうけつがれている。一部村域は上信越高原国立公園にふくまれ、新潟県津南町にかけて鈴木牧之の「秋山記行」にくわしい秋山郷がある。平家伝説がのこり、独特の風俗習慣をとどめた民俗資料を展示する資料館や、付近の切明温泉(きりあけおんせん)などに観光客がおとずれる。

村には横倉遺跡、小坂遺跡(こさかいせき)など旧石器時代の遺跡がのこり、尖頭器が出土している。また縄文、弥生時代の遺跡もみられる。中世、志久見郷の地頭となり勢力を強めた市河氏の菩提寺の常慶院(じょうけいいん)が箕作(みつくり)にある。市河氏は1170年(嘉応2)から1569年(永禄12)にいたる147点の文書をつたえ、武家政治の貴重な史料として名高い。国の重要文化財に指定され、現在は山形県酒田市本間美術館に所蔵される。

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