青海川の橋立硬玉(ヒスイ)産地
盗掘防止へ広がる輪
|
西頚青海町橋立の青海川はその名の通り青く透き通った清流。その中流、真砂橋から上流約500メートルに大小さまざまのヒスイ原石が点在する。緑色ヒスイが大半だが、貴重な紫色のラベンダーヒスイも産出する橋立硬玉(ヒスイ)産地だ。
渓谷への入り口には原石の採取を禁止する警告看板が至る所に立っている。昨年、ラベンダーヒスイを含む原石が縦横1メートル、厚さ20センチにわたって削り取られ、その後も別の原石からの盗掘が発覚し、対応した。
産地を管理する同町は、職員らが交代で24時間監視、車両乗り入れ規制、夜間立ち入り禁止など対策を徹底した。盗掘被害に遭った2つの原石の移転もすでに決まり、来春公開に向け準備が進められている。
「移転は残念だが、保護のためにやむを得ない。ヒスイ峡を学習と観光の場として積極的に活用し、大勢の人に見てもらうことが保護にもつながる」。長年ヒスイとかかわってきた町教育委員会の渡辺紀一・生涯学習課長はこう話し、今後の産地監視体制を含め文化庁などと検討している。
周辺の同町橋立地区は、今は無人。かつては橋立、真砂、清水倉の3つの小集落があり、ヒスイを知る者もなく、青海川は子供たちの格好の遊び場だった。
青海川が脚光を浴びたのは、国内第2のヒスイ産地発見にわいた昭和30年。隣の糸魚川市小滝川で同13年に日本初のヒスイが発見され、同町教委の青木重孝氏が「同じ蛇紋岩メランジ(複合岩)帯のある青海川上流にもあるはず」と探し始め、関係者の努力で実った。
同町の田海川西側にある寺地遺跡は縄文時代中期から後期のヒスイ工房があり、大量にヒスイ原石が持ち込まれていた。縄文人たちは河原や海に打ち上げられた転石を拾って、まが玉、丸玉などに加工して、ヒスイ文化が花開いた。
糸魚川と青海の硬玉産地と長者ケ原、寺地の両遺跡など、ヒスイにかかわる文化財を世界遺産に登録しよう、という声が糸西地区の有志から上がっている。
郷土史研究家の土田孝雄さんは「世界最古のヒスイ文化発祥の地は、地元だけでなく人類共通の財産という意識を持ち、保護していくことが今こそ必要」と呼び掛ける。古代のロマンあふれる運動に市民の間にも賛同の輪が広がりつつある。
【メモ】昭和32年に国天然記念物に指定。車両乗り入れは土、日曜、祝日の午前9時から午後4時半まで。周辺は自然観察歩道が整備され、野草や野鳥の観察が楽しめる。北陸自動車道親不知インターチェンジから雨池経由、車で30分。JR青梅駅から県道橋立青梅線、車で20分。
http://www.niigata-nippo.co.jp/essa/esanen27.html